広重『名所江戸百景 深川洲崎十万坪』
宮部みゆきさんの「初ものがたり」の中に、「遺恨の桜」という短編が収められています。真夜中、その一文に思わず反応してしまいました。
深川は埋め立てで造られた新開地である。 大川に近い方ほどよく開け、町も混み合い、門前町はにぎわいお茶屋の遊郭は人を集める。だが、東へ進んで下総の国が近くなればなるほど、町屋は少なくなり、田畑がつらなり、元々の素顔であるだだっ広い埋め立て地の顔が露わになってくる。
通称十万坪・八万坪と呼ばれるあたりは、一面に田圃が広がり、ところどころに地主の屋敷や大大名の広大な下屋敷が点在する場所だ。あまりにも広く、空は高く、掘割は青く、江戸の洒落のめした匂いに代わり、稲の青臭さと肥しの臭いが風に乗って運ばれてくる。(原文まま抜粋)
この光景、広重さん(歌川広重)の「名所江戸百景」の中の一枚、『深川洲崎十万坪』ではないですか!
この本、出た時に読んでいたのに、なーんで今まで気がつかなかったのだろ??
えっ? 違います?? (ま、本人の自己満足でもよいのです)
鷲の目の先が気になって気になって、、、、笑 想像力が掻き立てられる絵なのですよ。
あの、桶の下って魚いるの? 田圃に何か獲物見つけた?
教えて!
私は昔から、「Mは、好きな人と好きな人を掛け合わせる天才だね」と、友達にからかわれたことがある程、相乗効果を生み出すのが得意な人でした。だのに、、、これに関しては今頃、気が付いたなんて、ひゃー遅い。
私のDNAは99%父(これも父が亡くなってから気がつきました 笑)です。どんなところが?、と言うと、芸術家もどきのところ。但し、父は芸術家みたいなサラリーマン、だったのに対して、私は最初から普通の人の好きレベル。父は自ら絵を描き、譜面が読めないにも関わらず一度聞いた曲は全て、ピアノでもヴァイオリンでも弾けた人。つまり絶対音感の人。
それに対して私は絵は全く描けないし、ピアノだって譜面を見なくては弾けないただの人。テレビで放送されたN響の演奏聞いて、1時間以上にも及ぶピアノをそのあと即演奏するなんて芸当は、どう逆立ちしても私には無理、、できん!!
ウチのオトーサンて地獄耳?頭の中、マジで覗いてみたいわっ!
と、子供の頃真剣に思っていたことありました。だから「のだめ」を初めて読んだ時、「うわ~~オトーサンが女の子になっちゃった?!」と思ったほどです。
で、そんな父の才能はこれっぽちも受け継ぎはしなかったものの、その代わり?、絵でも絵画でもキャパ広大、見るのも聞くのも大好きで、それが誕生した背景だの、横関係だの、それこそ好きと好きを繋げる作業が得手で。解説、やっていいならやりまっせ~、の口です。笑
そんな訳で父の影響下、小さい頃から油絵には親しんできたのですが、浮世絵には縁遠く。初めて本物を観たのは1980年に開催された「ロートレックと歌麿展」。すっかり虜になりました。但し、主役の歌麿さんにではなく、出口辺りに飾られていた長喜さんと春信さんに。
長喜さんの「くちべに」なんて色っぽいんだろ!
春信さんのは全体の色遣いの柔らかさが溶けるよう、、、くー、たまらん!
嬉しくて購入した画集が、家で見たら全く伝わってこないのが300%がっかりしたものです。
当時、浮世絵展と言えば大半は歌麿さんが占めていませんでしたか? 他の方はそれこそ周辺、と称して、ちら、ほら、と出てくる位。ですから、広重さんも北斎さんも、その時購入した図録の最後に載っている解説で知りました。この人たちの名前、よく出てくるけど、誰??
そして、出会ったのが、広重さんの『名所江戸百景』。
特にひとめ惚れしたのが、「深川洲崎十万坪」と「王子装束ゑの樹大晦日の狐火」。
これには珍しく裏ストーリーがありまして、民間伝承、と言うか、斎藤月岑(げっしん)という方が編集した「江戸名所図会」からヒントを貰って描いたのでは?という説があります。
その昔、関八州の稲荷社を束ねる王子稲荷、というお稲荷さんがありました。
毎年、大晦日の夜、この王子稲荷社の近くにある榎の下に、お狐さんが集まります。そこで、衣装を改めて、王子稲荷社にお参りに行く、というものです。
この辺りの農家では、狐がともす狐火の数で、翌年の豊作を占ったと言われているのです。
言い伝えを絵にしてしまったちょっと珍しいタイプのもの。何度見ても、可愛くて可愛くて、好き過ぎて、本物持てないのだからせめてグッズで、と、クリアファイルに始まってあれやこれや、小物持ってます。笑
日本では狐に馬鹿される、狐に憑かれる、という悪い意味での言い伝えがありますが、王子稲荷に詣でるお狐さまのように、翌年の豊作を占った、というよい意味での言い伝えもありますので、あんまり、嫌わないでくださいね。(byキツネファン)
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今日のお薦めのワイン
ヴィラ・ヴォルフ / シュペートブルグンダー・アルテ・レーベン 2004年
https://nuimama-ny152.shop/?pid=135282662
生産者 : ヴィラ・ヴォルフ
地 域 : ドイツ > ファルツ
品 種 : シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)100%
1996年、モーゼルの醸造家「Dr.ローゼン醸造所」のオーナー、エルンスト・ローゼン氏が、衰退傾向にあった名門J.L.ヴォルフ醸造所の経営を引き継ぎ、1997年産のワインで見事名声を取り戻したワイナリーがこちら。
その後、ヴィラ・ヴォルフ醸造所と名称を変更。現在は女性醸造家スミ(澄)・ゲヴァウアーさんを責任者に迎え、グーツ(デイリー)ワインから畑名入りのワインまで幅広く生産しています。
この醸造所で、今まで紹介したワインの中では一番高額な赤ワインです。古木のブドウを使用、12年以上の熟成を経た限定蔵出しワイン!
「ほっこりする~~~」と、召し上がった若い女性から思わず漏れた一言、それ程エレガント。
「これを優しいと言わずして何を持って優しいと定義するか?」と、お隣りで仰ったのは彼氏。(何もそんなに小難しく言ってくださらなくても、、、笑)
色目も淡く、見ただけで優しさが伝わるような、他のドイツの生産者とはまた一味も二味も違うシュペートブルグンダー。疲れた時に、ほっこりしたくなったら、是非これです。癒しって大事ですよね。
この生産者が南仏で監修しているワインもあります。よろしかったら、併せてご覧ください。
wine-techo-kotonoha.hatenablog.com
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