ワイン手帖

ワインショップ「Shopgirl_NY152 」 エッセイ&ワインこぼれ話

平櫛田中の『鏡獅子』

 

彫刻にはさほど触手を伸ばさない私が、何度観てもいつ観ても惚れてしまうのが、平櫛田中の『鏡獅子』

 

それは国立劇場のロビーに、50年も前から存在します。 

 

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鏡獅子

 

初めて観たのは41年前。当時はまだロビーの中央に置かれていて、入口を入って真っ先に出会えたのですが、平成7年から現在置かれている奥側へ移動になりました。

 

ど真ん中では、通行の邪魔になる、という理由で。

 

アホラシ。

歌舞伎だの芝居だのを観たあとは、大概の人間は余韻に浸っていて、そんなに慌てて後先も見ずに帰るような真似はしないんじゃないの?

と私が言ったら、近頃の人は終わったら、いの一番に帰りたいんだってさ、と友達が吐き捨てるように言ったものですが、その時から既に24年が過ぎた今なんぞはもっと、せかせかと我先にと帰宅する時代に突入してしまったのでしょうか。

 

 

この『鏡獅子』を掘ったのは、彫刻家の平櫛田中(ひらくしでんちゅう)。22年という歳月をかけ、2mを超える大作です。近代彫刻の最高峰のひとつ、と称されています。

彫刻に色をつける!という画期的なことをやってくれた御仁です。

当時は、これは彫刻ではない、人形だ、とバッシングさえ受けたにも関わらず、これしか造れない、と意思を貫いた孤高の人でもあります。

 

バッシングしたアホな奴らめ、あの『鏡獅子』を観ていないのか!

実物を見ずしてバッシングしたのだとしたら、このうえない愚かな奴らよ。

あれほど綺麗で荘厳な彫刻は滅多にあるものではない。馬鹿め!

 

と、思わず過激な発言をしてしまいましたがの。

それ位、綺麗なのですよ。

 

 

 

 

モデルは六代目尾上菊五郎さん、屋号は音羽屋。今の右近さんのひいじいちゃんですね。

田中さんと、伝統を後世に残そうとしてモデルになったそうですが、残念ながら完成する前にお亡くなりになりました。

 

見せてあげたかった、、、。

と言うより、見て欲しかったなぁ、、、。

 

 

 

六代目菊五郎さんには、色々と面白いエピソードが残っていて。そのひとつに

ジャン・コクトーが来日した時に、菊五郎さんの『春興鏡獅子』を見て非常に感動し、

菊五郎は俳優ではなく、むしろ舞台の上の神主だ」 

と言ったそうです。

 

その逸話は中学の時に、国語の先生から教えて貰いました。

小さい時から歌舞伎が好きだった私は(初代辰之助さんの大ファンでした)、当時、ひょんなことから先生と歌舞伎の話に花が咲き。ある時、休み時間に教室でジャン・コクトーを読んでいた私に、その先生が、ジャン・コクトーって歌舞伎好きだったんだよと、教えてくれたのです。

 

でも、その時はまだ、ジャン・コクトーが感銘を受けた菊五郎なる人物が、のちに感動することになる彫刻『鏡獅子』のモデルになった人物だとは知るよしもなく、ただただ、コクトーが歌舞伎を好きだった、ということが単純に嬉しかったものです。

 

好きが、好きに繋がっている。

 

 

 

 

今、この『鏡獅子』の作者である平櫛田中の展覧会が岡山で開催されています。

彼の出身地、岡山県井原市にある田中美術館(でんちゅうびじゅつかん)で。

 

 

お目当ては、あの『鏡獅子』の試作品です。

 

 

あの鏡獅子にはいくつかの試作品があるのですが、中でも1939年に作られた

『試作鏡獅子』

は、小ぶりなのに、ちゃんと鏡獅子になっている!!!! (当たり前か 笑)

 

高さ40cm位でしょうか、きちんと彩色も施されていて、度迫力こそないものの、傍にずっと置いておきたくなる逸品です。

 

以前、美術品を盗む犯罪者の気持ち、ちょっとわかるよねぇ~~~~と、友達と一晩語り明かしたことがあります。それ位、生きて呼吸さえしているのでは?と思わせる作品が、世の中にはあるものなのです。

 

 

 

この『試作鏡獅子』

11月10日まで、

田中美術館の開館50周年記念特別展「没後40年 平櫛田中 美の軌跡」

で、観ることができるそうです。

是非。

 

 

 

 

 

行きたいなぁーーーー。

 

 

 

 

 

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シャトー・ラプラーニュ 2010年

 

生産者 : シャトー・ラプラーニュ

地 域 : フランス > ボルドー > サンテミリオン

品 種 : メルロー90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%

 

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 スパイシーなニュアンスが僅かに感じられ、熟成による角の取れたタンニンを楽しめます。まさにこれからが飲み頃の、お手軽ボルドーです。

 

 

 

 

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