ワイン手帖

ワインショップ「Shopgirl_NY152 」 エッセイ&ワインこぼれ話

ふと気になった

 

小学1、2年生の時、クラスに、今で言うところの「発達障害」の男の子がいました。

 

当時、私の通っていた小学校は二人でひとつの木の机を使っていて、学期ごとの席替えをするまでは、同じ子と半々にして共有するわけです。席替えは1年に3回ありましたから、普通は2年間で6人の子と相席になる筈でしたが、、、何故か私は2年間の大半をその子の隣で過ごしました。

 

まだ、「発達障害」という言語さえ世の中になかった頃のこと、周りからは「おかしな子」とか「変な子」という言われ方をされ、先生も口に出して、「もんだいじ」と言っていたように思います。

誰かに暴力を振るったこともない。隣の子(私ですが)に嫌がらせをしたことも、何か迷惑をかけたこともない。私が困ったことは何ひとつない。それでも「もんだいじ」扱い。

 

それは、彼が人と口をきこうとはしなかったからです。

 

名前を呼ばれても、答えを聞かれても、手を挙げて返事をすることも答えることもせず、ただ下を向いていただけ。そして、恐らく教師が一番アタマにきていたのは、外に出ないことでした。そう、その子は教室までは登校してきたのですが、断固として体育の授業には出ようとしなかったのです。

 

1、2年を受け持ってくださったのは、大ベテランの女性の先生で、校内でも母親の間でも、温厚でいい先生という評判の教師で、親との間も意思疎通のきちんとできる優等生型の教師だったのですが、その先生をしても彼を外に出すことはできず、毎回、体育の授業の度にひと騒動もちあがりました。

 

教師の沽券にかかわるとばかりに無理やり腕を引っ張り外に連れ出そうとする先生。

全身の力で絶対に外へは連れ出されまいと抵抗するその子。

両者の声にはならない、無言のバトルを横で見ていなければならない周りの子供たち。

 

そのうち腕が抜けるのではないかとひやひやしても、何かを言うことなどできる年でも時代でもなかったので、毎回、体育の授業はスタートが遅れたような。唯一、かけられた迷惑と言えばそれ位で、それが迷惑行為だなどとはわからない年齢だったのが幸いして、大事になることなど一度としてありませんでしたが、その時の先生の鬼の形相は、実は今でもはっきりと忘れられない光景として、私の脳裏にインプットされたのでした。

 

体罰とは言い難い。しかし、断固拒否姿勢の6歳の男児を動かそうとするには相当な力が必要だった筈。以前、息子のおしめを替えようとしたママさんから、赤ちゃんとは言えその力は凄まじいもので侮ってかかれない、と聞いたことがあります。腕を引っ張って駄目な時は、抱え込んで動かそうとしてらっしゃいましたが、それでも効果はそんなにはありませんでした。

 

女の力では連れ出すだけで精一杯だったようで、体操着に着替えさせることができたのは2年間で殆どなく、着替えさせても皆と一緒に身体を動かすことはせずに校庭の一番高い樹の下で、授業が終わるまでじっと、それこそただじっと、立っていたのでした。

 

勉強は? 

恐らくそれは大丈夫だったのでしょう。一度だけ答えを迷っていた私に「〇×△じゃん」と、言ったことがありましたから。後にも先にも誰かに答えを教わったのはその時一度だけでしたので、大層驚きましたが、それより初めて聞いたその子の声は、決して他の子には届かなかったような小さな声だったにも関わらず、「そんなこともわからないのかよ」と少し上から目線で、凛とした響きがありました。頼もしささえ感じられる、、。

逆に私はそのことがあってから親近感を覚え、迷った時は「これで合ってるよね?間違えてないよね」という意味を込めて、わざとノートを見せるようになりました。その子はチラリと見ては目をそらすのですが、黙っている時は正解!何か呟いた時は不正解!と勝手に一方的に決めたのです。ま、お陰様で、私たちが不正解だったことは一度としてなく、至って平穏無事な2年間だったのですが、その子は3年生になるとどこかの施設に転校した、と、風の便りに聞きました。

 

今でも疑問に思うのは、あの時の先生の接し方です。皆と同じことをしなければ駄目、という時代でしたから、きっとあの当時はあれしか方法がなかったのでしょう。

しかし、あれだけ評判の良い教師が、一生徒(私)の記憶の中に鬼の形相しか残せなかったことが、私には淋しいことのひとつでした。

高学年になった頃、私は母親から、常に私はその先生からは褒められていた、と聞きました。それは、他の生徒ではその子の隣が駄目で(恐らく)、私とだったら何事もなく無事に収まっていたから、教師の立場としては、私さえ隣においておけばよかったから、だからいつも私を誉めていただけにすぎないのでは?と、勘ぐってしまい、素直に喜べなかったものです。

 

先日、グッドドクターという番組を見ていた時にふとその子のことを思い出してしまったのです。あの子にも絶対味方になってくれる誰かがいたら、もしかしたら問題児ではなく、多少の変わった子位で済んだのかもしれません。

あの子よりもっともっと危険な問題児なんて、あの当時でさえ、もっと沢山いましたから。

 

口をきかない、太陽にあたりたくないだけで問題児。ある意味平和と言えば平和だったのですね。

 

それとも、それも、何か正式名称のある病気なのでしょうか?

 

その子が今、生きているのかさえ不明ですが、願わくば、周りに受け入れて貰えるような仕事をし、愛情のある家庭に収まっていて欲しいなと、他人事ながら思うのです。 

 

 

  

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今日のお薦めのワイン

バンフィ / “コステ” ロゼ・トスカーナ 2018年

https://nuimama-ny152.shop/?pid=144644328

 

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バンフィ / “コステ” ロゼ・トスカーナ 2018年

  

生産者 : バンフィ社

地 域 : イタリア > トスカーナ州

品 種 : サンジョヴェーゼ主体、ヴェルメンティーノ少々


  地中海性気候とモンタルチーノ丘陵地帯特有のミクロクリマ(微気候)に恵まれた、広大なブドウ畑を所有するバンフィ社。規模でも品質の高さでも、指折りのビッグワイナリーとして国内外で高い評価を得ている生産者です。皮が厚く凝縮感のあるブドウ、サンジョヴェーゼ種から伝統的なD.O.C.G.ワイン、“ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ”など、優れたフルボディの赤ワインを生み出していることでも有名ですが、新商品として待ちに待ったロゼが登場しました。

 “コステ”は、トスカーナの方言で「この場所」を意味する“コスティ”と、イタリア語で海岸を意味する“コスタ”を合体させた造語です。その名前のとおり、バンフィ社が位置するモンタルチーノで栽培されるサンジョヴェーゼと、トスカーナ沿岸地域(海沿いの畑)で栽培されるヴェルメンティーノから造られます。


 淡い綺麗な少しオレンジがかった色合いのロゼで、サンジョヴェーゼが生み出す骨格としっかりしたボディは、流石バンフィ社、と思わせます。
 香りも芳醇なので、充分重さを連想させますが、味わいはむしろエレガントで柔らかみも感じられるのは少量でも入っているヴェルメンティーノからきているのでしょう。ヴェルメンティーノの溌剌さやフレッシュ感が、サンジョヴェーゼのタンニンと見事に融合した、複雑な味わいのロゼワインに仕上がっている魅力的なワインです。数あるロゼの中でも店主のお気に入りです。

 

 

 

 

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